鳩山首相は29日午後の衆院本会議で、就任後初めての施政方針演説を行った。
演説では、景気を「二番底」に陥らせないため、「いのちを守る予算」と名付けた2010年度予算案を早期に成立させ、28日に成立した09年度第2次補正予算と合わせて切れ目ない景気対策を実行する方針を掲げた。
同時に、デフレ克服に向け、日本銀行との政策協調を進める考えも示した。沖縄県の米軍普天間飛行場移設については、5月末までに移設先を決め、最終決着させる決意を表明した。
首相は、自らの資金管理団体を巡る偽装献金事件について、「国民の皆さまに多大のご迷惑とご心配をおかけした」と改めて陳謝した。そのうえで、「政治とカネ」の問題への対応策として、「企業・団体献金の取り扱いを含め、開かれた議論を行う」と述べ、政治資金規正法改正などに関する議論を始める意向を示した。民主党の小沢幹事長の資金管理団体の土地購入を巡る政治資金規正法違反事件には言及しなかった。
また、官僚依存から政治主導への転換を図るため、昨年10月の所信表明演説で宣言した「戦後行政の大掃除」に関し、税金の無駄遣いを洗い出すために昨年行った「事業仕分け」の第2弾を実施して特別会計の整理統合を進める意向を示した。
さらに、各省庁の副大臣や政務官の増員などを柱とする「政治主導確立法案」を今国会に提出するほか、夏の参院選後には中央省庁の抜本的な再編に取り組む考えを表明した。
経済政策では、「人間の幸福を実現するための経済をつくり上げるのがこの内閣の使命だ」と述べ、行き過ぎた市場原理主義の転換を宣言した。経済成長に向け、世界最高水準の環境技術を活用した「グリーン・イノベーション」や医療・介護技術の研究・開発を中心とした「ライフ・イノベーション」を促進し、雇用の創出にもつなげる方針を打ち出した。
外交では、首相が提唱する「東アジア共同体」構想の実現に向けた具体策として、07年から米軍が中心に実施している人道支援活動「パシフィック・パートナーシップ」に、今年から海上自衛隊の輸送艦を派遣し、太平洋・東南アジア地域で医療支援や人材交流を行うとした。同時に、共同体形成は、「揺るぎない日米同盟が前提条件だ」とし、米側への配慮を示した。
首相は29日夕に参院本会議でも演説する。
(2010年1月29日14時08分 読売新聞)