あなたの脳にはクセがある
年齢違いの子どもたちが集まって、日がな一日、遊んで暮らす。そのどこがいいか。一歳児を三歳児が、三歳児を五歳児が、五歳児を七歳児がというふうに、順送りに面倒を見る。①そうして育つ子どもたちのなかで、年上の連中は、自分がついこの間までそうであった状態を、年下の子どもの面倒をみることによって再確認する。つまり学習でいうなら、復習をするのである。さらに面倒をみてもらう年下の子たちは、少し発育の進んだ子どもと接することになる。これはすなわち②予習である。異世代の子どもたちが団子になって遊ぶことの利点は、まさに発育の予習と復習を繰り返すこと、現代風にいうならフィードバックを繰り返しながら育つことである。
子どもたちだけで遊んでいるのは、親がつきっきりで面倒をみるのに比べたら、乱暴な育て方だ。いまではそう思っている母親が多いのではないかと思う。私はそれは逆ではないかと思う。子どもの集団のなかで育つほうが、じつは右に述べたように、ていねいに育っているのかもしれないのである。
(養老 孟司 『あなたの脳にはクセがある』中公文庫)
日がな一日:朝から晩まで、一日中
連中:人々
発育:成長
異世代:異なる年代の人々
団子:かたまり
利点:いい点
問1 ①「そうして育つ子どもたち」とあるが、どんな子どもたちか。
1 同じ年齢の子ども同士で遊ぶ子どもたち
2 年上の子どもだけと遊ぶ子どもたち
3 年下の子どもだけと遊ぶ子どもたち
4 ちがう年齢の子どもと一緒に遊ぶ子どもたち
問2 ②「予習」とあるが、ここではどんなことか。
1 発育の違う子どもたちが集まって、遊ぶこと
2 子どもが自分より発育の進んだ子どもと接すること
3 年上の子どもが自分より年下の子どもの面倒をみること
4 子どもが年齢の違う子どもと一緒になって勉強すること
問3 ③「それは逆ではないか」とあるが、ここではどんな意味か。
1 多少乱暴な育て方をしたほうがいいと考える母親がいるが、そうではないだろうという意味
2 いつも母親がそばにいたほうが子どもにとっていいと考える母親がいるが、そうではないだろうという意味
3 子どもたちだけで遊んでいるのはけがをしたりして、危険だと思う人もいるが、そうではないだろうという意味
4 子どもたちだけで勉強せずに親が教えたほうがいいと思う人が多いが、そうではないだろうという意味
問4 筆者の主張と最も合うのはどれか。
1 年の違う子どもと接することは、子どもの成長によいことだ。
2 年上の子どもが年下の子どもに予習と復習をさせることはよいことだ。
3 母親と接してばかりいる子どもは乱暴になるものだ。
4 子どもは常にだれかが面倒をみていないと成長できないものだ。
正解:4 2 2 1