推理
文の流れ・人物の心理や性格を推理する
例題1
今朝、国の恋人から夏休みに日本に遊びに来ると言う連絡をもらった。恋人は僕が日本に来てからずっとさびしがっていた。だから、今日の声はいつになく弾んでいた。僕も学校で苦しいときや嫌なことがあったときは、恋人からの電話やメールで励ましてもらったりしていた。私にしても1年ぶりの再会が嬉しくないはずはない。自然に顔もほころぶ。だが、学校ではいつもと同じように、普通にしていようと思った。
表面的には、まじめな顔をしていたつもりだったが、クラスメートに「今日は何かあるの?」と聞かれた。やはり、気持ちというのは隠しても、つい顔に出てしまうものなんだな。
問い 「ぼく」は、今日、学校でどんな顔をしていたのか。
1、さびしい顔 2、苦しくて嫌な顔
3、嬉しい顔 4、まじめな顔
パターン1
① 人物の心理や性格を推理するとき、推測に必要表現(解答・解説P6,7参照)をさがし、それが誰の気持ちかを、特定する
② 次に人物の行動・態度やその場の情景から、描かれている場面を想像し、登場人物に感情移入してみる
<解き方>
文中での気持ちを表す表現は「さびしがっていた」(恋人)、「苦しい・嫌な」(僕)「励ましてもらったり」(僕)、「うれしくないはずはない」(僕)、「まじめな顔をする」(僕)である。したがって、1は×。「苦しいときや嫌な」時、励ましてもらったのは「僕」だが、過去のことであるため2は×。「まじめな顔」は表面的な顔であり、隠していた本心は、「顔もほころぶ」(うれしい)のである。クラスメートに「何かあるの?」と聞かれたことからも、本心が顔に出ていたと考えられる。答えは3。
● やってみよう-1
(芝居役者の雪雄は、劇場に近いと言う理由で、弟である優の家の二階に光乃と共に間借りしていた。が、優と口論になり、「今は芝居があるから動けない」という理由で、優を追い出すことになった)
雪雄の人あしらいの不器用さは、年とともになおるかといえばその兆しは一向になく、優が自分の家を出てゆくさまを見て、きりきりと胸を刺されてはいても、「優、俺が悪かった」とも、「俺のほうが出てゆくから」とも、いえないのであった。
光乃にそれが手に取るようにわかるのは、引っ越しの日にわざと家に戻らなかったり、やけに光乃に当り散らしたるするためであって、脇から見ていると、なぜ一個と、ごめんよ、をいえなにのかしら、とその故ない意地の張りようがはがゆいほどに思える。
(『きのね』下巻 新潮文庫による)
問い 光乃から見て、雪雄はどんな性格か、次の中から選べ。
1、何をやっても不器用な性格 2、何にでも当り散らす性格
3、意地っ張りな性格 4、はがゆい性格
例題2
午後は、しばらくはまあ雑多な人たち-商売途中のセールスマンがサルの奥で手帳をつけていたり、テラスでは買い物帰りの奥さんがおしゃべりしていたり。カウンターでは近所の商店のオヤジさんが油を売っている。しかしそのノンビリした時間が過ぎるとまた夕方、会社の退ける時刻になって、カウンターは通勤帰りに一杯ひっかける男たち、サルやテラスは友人や恋人と待ち合わせる人々で、ともに満員となる……。
時間帯による利用客の変化はごく一般的に言えばそんなものだが、もちろん立地条件によって大幅に異となってくることはいうまでもない。
カフェは、パリと言うとしに住む人々にとっての(1)である。人々はそこで、それぞれ自分の好きなようにくつろぎながら、他人と交歓して楽しみ、また大勢の人々に囲まれていながら孤独を楽しんだりするのである。だからわたしたち旅行者のにもってこいの場だといえる。
「注1」 サル:ソロン、酒場
「注2」 油を売る:用事の途中で話し込んだりして、時間を無駄にすること
問い (1)に入るものとして、最も適当なものはどれか。
1、待ち合わせ場所 2、酒場
3、食堂 4、リビング・ルーム
パターン2
① 文の流れから問われているものは何かを推理する
② 問題の箇所の前後に答えのヒントがあることが多い
<解き方>
問われているのは、カフェがパリの人々にとって「何であるか」である。「買い物帰りの奥さん」にとっては「おしゃべりの場所」、「通勤帰りの人」にとっては「酒場」、「友人や恋人」にとっては「待ち合わせ場所」であり、それぞれが別の目的でカフェを使っていると言うのが、前半部分。ヒントは「自分の好きなようにくつろぐ」である。答えは4。