◆防衛計画の大綱〔防衛問題〕
冷戦終結後の世界的な安全保障環境の変化、若年人口の減少による自衛官募集難、近代化による効率的運営などを背景に、一九九四(平成六)年二月から約半年間開かれた「防衛問題懇談会」では、基盤的防衛力の概念を生かしつつ、防衛計画の大綱の修正が適切であると報告された。これを受けて防衛庁原案「今後の防衛計画の基本的考え方」が九五年四月明らかにされ、安全保障会議に報告されて見直し作業に入り、同年一一月、新しい防衛計画の大綱が決定された。その骨子は、基盤的防衛力を基礎に、装備の近代化、効率的な部隊再編と削減。これまでの限定的小規模侵略への対処に代わり、シーレーン妨害、領空侵犯、テロ活動、武装難民の流入など多様な危険への効率的、機敏な対処、災害救援行動の実施など。また国際貢献については、安定的な国際社会の実現に、より能動的、積極的に取り組むとし、即応予備自衛官の新設等が示された。また、日米安全保障体制の重要性が再確認されるとともに、防衛力の役割として、大規模災害など各種の事態への対応および安定した安全保障環境の構築への貢献が明記されている。
◆安全保障会議/内閣安全保障・危機管理室〔防衛問題〕
領空、領海侵犯やハイジャックなど、わが国の安全に重大な影響を及ぼすおそれのある国防以外の重大緊急事態が発生する可能性が高まっていることから、一九八六(昭和六一)年七月、従来の国防会議の任務をそのまま継承するとともに重大緊急事態への対処措置等をも審議する安全保障会議が内閣に設置され、国防会議は廃止された。内閣総理大臣は、(1)国防の基本方針、(2)防衛計画の大綱、(3)(2)の計画に関連する産業等の調整計画の大綱、(4)防衛出動の可否、(5)その他国防に関する重要事項、(6)重大緊急事態が発生した場合必要があると認めるときはその対処措置について安全保障会議に諮る。安全保障会議は、必要に応じ、内閣総理大臣に対し、意見を述べることができる。構成は、内閣総理大臣を議長とし、外務大臣、大蔵大臣、内閣官房長官、国家公安委員会委員長、防衛庁長官、経済企画庁長官を議員とし、同会議の事務は内閣官房に設置された内閣安全保障室が処理することとされた。九八(平成一〇)年四月、同室は内閣安全保障・危機管理室に改められ、国の安全にかかわる事項と国民の生命、身体または財産に重大な被害が生じ、または生じるおそれがある緊急事態への対処を受け持ち、同時に常勤の内閣総理大臣補佐官としての内閣危機管理監の事務の整理に関することも行うこととなった。
◆防衛庁〔防衛問題〕
一九五〇(昭和二五)年に設置された警察予備隊本部とこれに続く保安庁を改編し、五四年七月一日設置。総理府の外局で、長官は国務大臣をもってあてられ、わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つことを目的とし、このため陸上、海上、航空の三自衛隊を管理運営すること等を任務としている。組織としては、長官の下に政務次官と事務次官各一人、参事官一〇人のほか、防衛本庁と防衛施設庁が置かれている。防衛本庁には、長官官房、防衛、運用、人事教育、経理および装備の各局(官房長および局長は参事官をもってあてられる)からなる内部部局(主として文官で構成)、長官の武官幕僚機関である統合幕僚会議、陸上、海上、航空の各幕僚監部のほか、技術研究本部、調達実施本部、防衛大学校、防衛医科大学校、防衛研究所および自衛隊離職者就職審査会などが置かれている。行政改革会議(会長・橋本龍太郎)が検討した中間報告案では、防衛省への格上げも考慮されたが最終的に見送られた。