Ⅲ.読解(34点)
次の文の(一)(二)(三)を読んで51ー67の問に答えなさい。答えはそれぞれ選択肢ABCDの中から最も適切なものを一つ選び、記号で答えなさい
(一)(12点)
「勤勉こそ美徳である」という言葉は、21世紀には死語にしたい。「心豊かに生きることこそ美徳である」という言葉をそれに代えたい。
これまで日本人はよく働く国民であると世界的に評価されてきた。ところが、最近は(51)事情がだいぶ変わってきた。 働くことだけに一生を費やしてしまう日本人は「働きばち」とたとえられ、非難の対象にさえなっている。もちろん、「働きばち」にも(52)言いわけ がないわけではない。狭い国土、高い人口密度、乏しい地下資源。日本という国が生き延びていくには、とにかく働くしかなかったのである。これを支えてきたのは勤勉以外の何ものでもない。
しかし、そうは言っても、世の中というのは常に動いている。20世紀の日本と21世紀の日本が同じはずはない。勤勉さのお陰で物質的に恵まれた日本は、そのことを土台にして新しい方向へと進んでいかなければならない。(53)というこれまでの考え方は、当然、反省さらなければならないし、働きさえすればあとはどうでもいいという思想も改めなければならない。たとえば、過労死の問題。人間は生きるために働くべきなのに働いたために死んでしまう人がいる。何かを変えなければならない時に来ているのである?
そこで考えられるものの一つがコンピューターである。コンピューターという言葉を聞いただけで何か難しい、面倒くさいというイメージを持つ人がいるが、そういう人に会って話を聞いてみると、たいていこれまでの考え方を変えずにコンピューターを頭から嫌っている。これまでの考え方というのは、もちろん「勤勉こそ美徳である」という考え方である。なぜコンピューターを使うのか、その最も大事なところがきちんと理解されていない場合が多い。つまり、仕事をこれまでよりもたくさんするためにコンピューターを使うのだと考えている。しかし、(54)これは大きな間違いである。 間違いと言って悪ければ、改めるべき習性と言ってもいいかもしれない。
私は長年、コンピューターの開発に努めてきたが、(55)。まったくその逆である。少しでも皆の仕事量を減らそうと思って努力してきたのである。コンピューターの最大の利点は仕事にかかる時間を短縮するということである。たとえば、これまで二日かかった仕事が、コンピューターのおかげで2時間ですんでしまう。利用者はこの点をもっとよく考えてほしい。あとの時間はすべて遊べとは言わないが、少なくとも何時間かは仕事以外のことに使えるはずである。その何時間かをいかに豊かに使うかに、これからの(56)日本がかかっていると言っても過言ではないのである。
51、下線51に「事情がだいぶ変わってきた」とあるが、これはどういうことか、次の中から最も適当なものを一つ選びなさい。
A、よく働く国民の一生の過ごし方が変わった。
B、世界の日本人に対する見方が変わった。
C、働くことに対する日本人の意識が変わった。
D、日本人の働きすぎという評価が変わった。
52、下線52の「言いわけ」とは、どんな言い分けか、次のなかから最も適当なものを一つ選びなさい。
A、働かなかったら日本は生き延びられなかっただろうという言い分け。
B、働かなければ日本の国土はっ狭くなっただろうという言い分け。
C、働かなければ日本は生き延びられなかっただろうという言い分け。
D、働かなかったら日本の人はますます増えただろうという言い分け。
53、(53)には次のどれが入るか、最も適当なものを一つ選びなさい。
A、物質がすべて B、勤勉よりも物質
C、物質よりも勤勉 D、土台がすべて
54、下線54に「これは大きな間違いである。」とあるが、それはなぜか、次のなかから最も適当なものを一つ選びなさい。
A、コンピューターの使い方を良く理解する前にコンピューターを使っているから
B、コンピューターを使って少ししか仕事をしようとしないから
C、コンピューターは一日2時間だけ使うものだから
D、コンピューターの最大利点は仕事がたくさんできるから
55、(55)には次のどれが入るか、最も適当なものを一つ選びなさい。
A、使う人の仕事量を減らすために開発を急いできたのではない
B、利用者に正しく使ってもらおうと思って開発を急いできたのである。
C、使う人の仕事量を増やすために開発を急いできたのではない
D、コンピューターの利点を理解してもらおうと思って開発を急いできたのである。
56、下線 56に「日本がかかっている」ととあるが、この「かかっている」と同じ意味の「かかっている」を次のなかから一つ選びなさい。
A、壁に美しい風景の絵がかかっている
B、あの宝石には多額の保険がかかっている
C、今度の計画には会社の将来がかかっている
D、富士山には今日も雲がかかっている
(二)(10点)
履歴書に大学名を書かなくてもいいという企業が現れた。レコード業界トップのソニーである。脱学歴に踏み切った背景には、出身大学にこだわらず、個人の能力を思う存分に伸ばすという社風がもとからあった。同社は創業21年で、若手グループの力が、有能な若いアーチスト(芸術家;能工巧匠)を大量にここの世界に送り出してきたという実績を持つ。ヒットを生むアーチストを見抜くには、学歴など何の役にも立たない。どこの大学を卒業したかではないのだ。若者たちが何を求めているのか、そして、彼らが一体、世の中に何を問いかけているのか、(57)それら を確かにつかむ先見の明がこの会社にはあったのだろう。
「A」大企業に就職すれば年功序列で、特にミスをしなければ生涯安泰に暮らすことができる。いわゆるブランド志向がまかり通っていた。しかし、そのブランド志向もいずれ影をひそめるに違いない。
「B」就職を目の前にした新卒の学生たちは、ブランドや給料よりはむしろ、やりがいのある仕事、充実感を覚える仕事への意識を強めている。気に入らない仕事はしたくないという若者が増えている。
「C」一方、学歴に対する企業の意識もかなり柔軟になっている。ちなみに、「日本の100社’89」(日本経済新聞社)のトップインタビューによると、期待される人材として、「世界を相手にする気概と体力のある人」「国際化に積極に挑戦する人」「やる気十分の人材」「覇気のある若者」「個性を発揮する創造的人材」「有言実行型」「チャレンジ意欲のある若者」「他分野に挑戦する活力ある人間像」「若おじん(缺乏朝气的年轻人)はだめ」「信念と行動力の人」「好奇心と執着心のある人」「大胆な発想のできる人」「アイデアマン」などとなっている。企業自体、出身大学よりも個人の能力や個性に重点をおく採用方針へと転換しているのが現状である。企業は社会の動静に鋭く対応する姿勢を見せている。
「D」(58)、依然として有名大学へと進学希望者が殺到している。脱学歴社会へと変貌している現実を知ってか知らずか、学校や世の母親達は、より偏差値を上げなければと、子供たちの尻をたたく。悲鳴を上げている子供たちの声が(59)かれらには届いていない。その圧力に耐えかねて非行に走り、自殺に追い込まれている子供たちがあわれである。
脱学歴社会は着実に進んでいるのだ。偏差値だけで人間を判断しない社会になりつつある。人の気持の分かる、人間的に豊かな若者こそ21世紀の担い手になるだろう。
57、下線(57)の「それら」は何を指すか、次のなかから最も適当なものを一つ選びなさい。
A、若者たちが何を求めているかということ
B、若者たちが何処の大学を卒業したかということ
C、若者たちがヒットを生むアーチストを見抜くこと
D、若者たちが個人の能力を思う存分に伸ばすこと
58、(58)にいれるのに最も適当なものを選びなさい。
A、したがって B、とはいえ C、もっとも D、しかも
59、下線59の「彼ら」とは誰か、次のなかから最も適当なものを一つ選びなさい。
A、企業のトップたち B、進学希望者
C、学校や世の母親達 D、人間的に豊かな若者たち
60、「かつては『寄らば大樹の陰』という言葉が定説になっていた。」という一文は文中「A」「B」「C」「D」のうち、何処に入るか、次のなかから最も適当なものを一つ選びなさい。
A、「A」 B、「B」 C、「C」 D、「D」
61、本文の内容に合うのは次のうちのどれか、次のなかから最も適当なものを一つ選びなさい。
A、脱学歴社会は確かに進んでいる。高い学歴に加え、他人の気持も分かる豊かな人間性を持った人人が次の時代を築いていくだろう。
B、脱学歴社会は確かに進んでいる。企業も学歴を無視して、個人の能力や個性に重点を置く採用方針をとるようになった。
C、脱学歴社会は確かに進んでいる。若者も学校より社会に対して目を開き、やりがいのある仕事や充実感のある仕事を求めて会社を選ばなくてはならない。
D、脱学歴社会は確かに進んでいる。しかし、子供たちはそれとは無関係に偏差値をあげるために尻をたたかれ、学歴を身に付けざるを得ない状況に追い込まれている。
(三)(12点)
ある本を読んで複雑な気持になった。この本には「毎朝10分、本を読んだ女子高校生達」という副題らしきものがついているが、要するに、ある私立女子高校で始業前の10分間、毎日読書させた結果、遅刻も減って、生徒達が本好きになったという教育報告である。どうしてこのような「朝の読書」を実践したのか、教師側の座談会や卒業前の一クラス全員の感想文もついている。(63)それによると、読書は強制するものではないという意見に対して、読書の動機づけは必要なのではないか、最初の環境の整備こそ教育の役割で、後は自分で習慣になるという。
「A」生徒達の感想文を読むと、これまでコンビニ(昼夜商店)で漫画雑誌や週刊誌を見るだけの自分が、進学校の生徒と同様に本屋さんに行き、対等に本を探しているのが誇らしいという意見や成長した自分を感じるという意見が並んでいる。
「B」気になることはあるが、教育実践としては評価すべきことなのだと思う.少なくとも教師が生徒達のことを真剣に考えている様子が行間から伝わってくる。荒廃した教育の現場を思えば、(64)これは特筆すべきことだろう。したがって、「朝の読書」実践教育にケチをつける(挑毛病)ものではない。それに、読書がたしかに習慣であることも否定できない。
「C」というのは、根本の疑問として、本を読むことが本当に素晴らしいことなのか、ということがあるのだ。読書好きの人間が素晴らしい人格者とは思えないのは、本好きで、しかも嫌な人間を多く知っているからだ。本を読む人と読まない人の中に素晴らしい人間と嫌な人間がいる比率は同じようなものだ。人間形成に、たしかに読書は役に立つかもしれない。結果としてダメになるかもしれない。しかし、逆は決して真ではない。きっかけが無ければ本を読まないではないかという意見には、本は読まないでもいいのだと答えよう。われわれは好きだから(65)。
「D」以前も書いたことだが、繰り返す。本は必ずしも役立つものではない。むしろそういう(66)有用性から依然と自立しているからこそ素晴らしいのである。ところが、本は必ずタメになるという活字信仰が、逆に自由な空間から外に本を追いやっているのが現状のようで、その幻想こそが活字離れを生んでいるのではないか。
62、下線62の「朝の読書」を実践した教師達の意見は、次のどれか、最も適当なものを一つ選びなさい。
A、読書は強制するものではない。
B、読書を習慣にするには動機づけが必要である。
C、教育論と読書論はことなる。
D、読書好きの人間が素晴らしい人格者だとはいえない。
63、下線63の「それ」は何を指しているか。次のなかから最も適当なものを一つ選びなさい。
A、筆者が読んだ本の副題 B、クラス全員の感想文
C、教師の座談会 D、「朝の読書」の教育報告
64、下線64の「これ」は何を指しているか。次のなかから最も適当なものを一つ選びなさい。
A、「朝の読書」の教育実践 B、女子高校生達の成長
C、筆者の疑問 D、教師の取り組みかたの評価
65、(65)に入る文はどれか。次のなかから最も適当なものを一つ選びなさい。
A、タメになっているに過ぎない B、考えているに過ぎない
C、書いているに過ぎない D、読んでいるにすぎない
66、下線66の「有用性から依然と自立している」とはどういうことか。次のなかから最も適当なものを一つ選びなさい。
A、役に立つかどうか、とは別の価値を持つということ
B、役に立たないことにこそ価値があるということ
C、役に立つことははっきりしているということ
D、役に立つかどうか、よく考えるべきだということ
67、「しかし、と私は考える。それは教育論であり、読書論はまた別である。」という文は文中「A」「B」「C」「D」の何処に入れるか、次のなかから最も適当なものを一つ選びなさい。
A、「A」 B、「B」 C、「C」 D、「D」
Ⅳ.次の文章の のある部分を中国語に訳しなさい。(16点)
衰退を逃れる道
先日ある企業の会合に呼ばれて公演した。会場は立派なホテルの宴会場であったが、「実はこのホテル、今月中で閉鎖することになっております」と案内してくれた従業員から聞いて驚いた。彼はこのホテルで27年働いてきたが、来月から勤める先が決まっていないという。(68)彼の厳しい顔付きは、まさに今の日本の経済危機の深刻さを表徴しているように思われた。
(69)新聞には『ある国際機関による日本の成長率、下方修正へ』という記事もでる。昨年12月に、予測した99年の日本の実質経済成長率マイナス0.5%が、更にマイナスの度合いが高まるであろうというのである。マイナスの成長率は衰退率と言った方がわかりやすい。
いや、実は今から12年前、1987年、そのころ私はニューヨークに住んでいたが、歴史学者のポールケネディが「大国の興亡ーー1500年から2000年までの経済力の変遷と軍事闘争」という本を出し、大きな反応を呼んだ覚えがある。(70)「経済力の裏付けのない軍事支出が続けば、やがて国は衰退する。スペイン、フランス、イギリスがたどった轍をアメリカも歩んでいる」と、この本は説いたのである。……
ところで、(71)目下、我が国は不景気の最中、しかし、少なくとも日本の指導者達は「日本は衰退の道を歩んでいる」とは言明していない。不況と言ってもそんなに慌てることはない。われわれは膨大な貯蓄を保持している。その額は日本のGDPの倍以上であり、アメリカの国債などにも投資されている。それで、バブル(泡沫经济)の清算さえすれば、自動的に成長軌道に復帰する。三段階の『再生ステップ』さえ踏めばソフトランディング(軟着陸)ができる。いわば「仱盲皮い侩娷嚖俣趣虺訾愤^ぎて脱線し、目下その復旧工事中、しばらくお待ちください」とでも言っているようだ。
しかし、「大国の興亡」の論旨を使えば、「経済力の裏付けの無い赤字支出をバブル清算のためにいつまでも続ければ、次の世代にはくに衰退する」という議論も成り立つのではないであろうか。軍事支出は一応軍事産業を維持し、経済に寄与するが、バブル清算支出は全くの「無」のようなものである。
さて、アメリカ経済はクリントンが大統領に就任したころから上昇をはじめ、現在も繁栄を続けている。……
ここで大事なことは、この改革が急速な技術の進歩を追いながら、それを促進する形で行われたということである。(72)大げさに言えば、文明の流れに沿った改革であったから成果を上げたのである。われわれの科学技術文明がつくった最高傑作といえば、今のところ、自動車とコンピューターが挙げられるのではないだろうか。今日、これらなしには生活できない。自動車は物質とエネルギーの面での豊かさを求める文明を象徴しているが、一方、コンピューターは知識と情報の豊かさを求める文明を代表している。言うまでもなく、われわれの文明は前者から後者の方に焦点が移っている。(73)アメリカの改革はこの変遷を先取りしたことになる。即ち、指針を過去にではなく、未来に求めて行動を取ったといえるのである。
……
ところが、(74)今世紀の科学技術文明は「この日の下に今までに全く無かった光と影を与えた」のである。影とは言うまでもなく深刻な環境問題、光とは生活の質の向上に資するさまざまの利益である。コンピューターと通信ネットワークを駆使するライフスタイル(生活方式)も最近のもの。こう考えてみると、(75)新しいグロバール(全球)文化が形成されるであろう21世紀には、やはり、様々のフロンティア(新的领域)の開拓や未知への挑戦が活発に行われ、創造力が求められるチャンスが多いことは間違いないであろう。21世紀のこの特徴をよく理解して始めて我が国は衰退を逃れるのである。
Ⅴ、次の文を日本語に訳しなさい。(10点)
76、正因为漫画在年轻人中间如此受到欢迎,所以它的影响是不可忽视的。
77、礼节就是不伤害别人的心,不说也不做别人厌恶的事。相反地,那种使人感到拘束的礼节,不是真正的礼节,不过是徒有礼节形式的冷淡无情的表现。
78、要在保持自然景观原来面貌的基础上发展有特色的旅游业,因为开发必须与自然景观的保护相协调统一。
79、大自然,不管以何种方式出现,它都会给孩子们提供一个父母们无法提供的、更为广大深远的、更丰富的世界。
(全文完)