ホストファミリーのお父さんが家に帰って来ると、田中さんはいつもお父さんに"How was your day?"と質問します。お父さんは今日、"Great."と言いました。「じゃあ、今日はいい日だったんだろう」と思いました。しかし、お父さんの説明では、バスのなかで財布を盗まれてしまったり、一緒に仕事をしているジェファーソンさんに会社を辞められてしまったり悪いことばかりあったそうです。田中さんはよく分からなかったのでお父さんに聞いたら、"Great"と言っても、言い方によって良い意味にも悪い意味にもなるんだそうです。お父さんは、皮肉の意味を込めて"Great"と言ったんだ、と説明してくれました。
田中さんは、去年日本に行って同じような経験をしたライアンさんの話を思い出しました。ライアンさんはあんまり日本語が上手じゃありませんが、日本人と少し日本語で話をすると、いつも「ライアンさんは日本語がお上手ですね」と言われました。ライアンさんはそう言われる度に、まだ下手なのにどうして日本人は「日本語がお上手ですね」と言うのだろうかと考えましたが、いつも「どうもありがとうございます」と答えました。後で日本語の先生にそのことを質問しました。先生の話では、日本人は、日本語はとても難しくてなかなか上手になれないと思っているし、日本語を上手に話す外国人にあまり会ったことがないから、少しでも日本語を話す外国人に会うと「日本語がお上手ですね」と言うのだろう、ある日本人は外国人とあまり話をした経験がなくて慣れていないから、会話の初めに何を言ったらいいか分からなくて、会話がスムーズに行くように「日本語がお上手ですね」を使うのだろう、とのことでした。
また、ライアンさんは京都に住んでいた時、いろいろな人と友達になりましたが、よく「暇な時にはうちに遊びに来て下さい」と言われました。ある日、ライアンさんと同じ趣味を持っていて、とても面白い山田さんという人と話をしましたが、別れる時に山田さんが、「暇な時にうちへどうぞ」と言いました。ライアンさんは山田さんともっといろいろなことを話したかったので、ある日山田さんを訪ねて行きました。ドアを開けて、ライアンさんがいるのを見て山田さんはびっくりしたそうです。ライアンさんは、山田さんがどうしてびっくりしたのか分からなくて、後で日本人の友達に聞いてみました。そして、京都では、「うちへどうぞ」というのは、本当にうちへ来て下さい、という意味ではなくて、単に儀礼的な挨拶に過ぎない、ということが分かりました。
田中さんは、英語でも日本語でも同じだなあ、と思いました。