むかしむかし、吉四六さんと言う、とてもゆかいな人がいました。
そろそろ秋が深まり、吉四六さんの村にもカモが飛んで来る様になりました。
「カモを取って食いたいが、庄屋(しょうや)さんの様に鉄砲も持っていないしな。
一体どうやって、カモを取ろうか。
カモという奴は渡り鳥だから、いつも飛び疲れているはず。
疲れると、休みたくなるものだ。
だから、休む場所があれば、・・・そうじゃ」
吉四六さんはポンと手を叩くと、ひょうたんのくびれたところになわをつけて、池に出かけました。
「おお、いるわ、いるわ。カモの奴、何にも知らずに遊んでおるわ」
吉四六さんはふんどしひとつになると、ひょうたんをかかえて池に入って行きました。
ひょうたんのなわの途中には、重りの石がしばってあります。
吉四六さんはひょうたんを浮かべると水面から首だけを出して、水草のかげに隠れました。
カモは、そんな事は知りません。
そして泳ぎ疲れたところに、ひょうたんがヒョッコリと浮かんでいます。
これは良い物があると、カモはひょうたんに登って羽をつくろい始めました。
カモは、油断しきっています。
「しめしめ」
吉四六さんは水草のかげからそっと手を伸ばして、カモの足をギュッと掴みました。
手づかみで、カモの生け捕りです。
「はい、一丁あがり」
こうして捕まえたカモは、なわのはしに次々としばっていき、その数はとうとう十羽になりました。
ひょうたん一つで、カモが大猟です。
吉四六さんはカモをかついで家に帰り、その晩はカモなべを作りました。