「Aほど~Bはない」の形で「Aはいちばん~」を表します。
あの人ほど親切な人はいない。(いちばん親切だ)
彼ほどの人はいない。(じょうずな人はたくさんいる。しかし、~)
引用の形では否定が主節の述語に現れることもあります。
これほど難しいとは思わなかった。(これほど難しくないと思った)
複文の従属節の中では、否定がなくても使われます。
あの人ほど頭がよくても、間違えることはあるんですね。
あれほどがんばったのだから、きっと優勝するだろう。
彼ほどの人でもまちがえる。
述語を受ける用法は複文として扱います。(→「53.程度?比較?限定」)
この問題は誰もできないほど難しいです。
「それほど」の「それ」が前の文を受ける場合は、否定の述語でなくても使
えます。述語を受けて極端な程度を表す用法になっています。
この問題は誰もできません。それほど難しいのです。
このように前の文を受けるのは「連文」の文法です。
「数量+ほど」の場合は、「ぐらい」より硬い言い方で、丁寧で書き言葉で
す。否定とは特に関係ありません。
ロープを5mほどください。
参加者は百人ほどでした。
お金が千円ほど足りません。
Nなど:例示
「など」と言うと、「NやNなど」の形で多くの物の中から例を挙げ、まだ
ほかにもあることを暗示する、という用法がすぐ思いつきます。
机の上には本やノートなどがあります。
人の場合は丁寧ではないので、使わないほうがいいでしょう。
田中や山田などが来た。
これは接辞(接尾辞)としての用法で、副助詞としては、その名詞を一つの
例として軽く言う言い方によく使われます。そこからまた、それを低くみる言
い方にもなります。
お茶などいかがですか。(←お茶はいかがですか)
この辞書などが適当でしょう。
あいつの顔など見たくもない。
この仕事はあの人などにはできません。(あの人になど)
パチンコ屋へなど行ったこともありません。
こんな仕事などは朝飯前だ。
かなりくだけた話しことばでは「なんか」「なんて」も使われます。
お茶なんかどう?
あんなやつになんかやるな。
お金でなんか買えないものだよ。
あの人となんて絶対イヤ!
これなんていいんじゃない?
述語を受ける場合は複文のところで。(「→55.その他の連用節」)
Nでも:例示?極端な例
一つの用法は、いくつかの可能性の中から、一つを取り出して、軽い提案と
して例示するような場合に使います。
お茶でもいかがですか。
明日にでも聞いてみましょう。
彼女にでも頼んでみたら?
散歩にでも行きませんか。
じゃあ、新聞でも見て(時間をつぶして)います。
「例示」でなく、それ以外の可能性を考えていない場合は「和らげ」の効果
が出ます。
それはねえ、その棚にでも置いといて。
この「Nでも」の用法は文末に特徴があります。「勧め」「命令」「意志」
などの「ムード」が来ることが多いのです。相手への要求などの直接さを和ら
げるために「例示」という意味合いが使われるのでしょう。
すぐ前でとりあげた「など」も例示の意味がありますが、この点で大きく違
います。
次に、もう一つの用法、「極端な例」の「Nでも」について考えましょう。
こんなことは、小学生でもわかります。
この「小学生」は、述語の「わかる」ということが成り立つ低い方の例です。
この問題は、専門の研究者でもわかりません。
この「研究者」は、「わかる」可能性がもっとも高い方の例として使われてい
ます。
これらの例からわかるように、「Nでも」は、述語の内容が成り立つ補語の
中で極端な例を出して、その場合に述語で表されるような内容が成り立つこと
と、それ以上に「ふつうの例ではもちろん~」という意味を表します。
ですから、上の「小学生」の例が言いたいことは、「これは誰でもわかる、
やさしいことだ」ということか、あるいは、「それなのにどうしてあなたはわ
からないのか」というような、状況から推論されうる意味であるかもしれませ
ん。どちらにしても、「小学生にわかる」ことが中心的な意味ではありません。
難しい仕事でもやります。(Nを)
このロボットは狭いところにでも入ります。
参加者はかなり遠くからでもやってきます。
あの人は台風の日でも休みません。
なお、「疑問語」についた場合の「いつでも?どこでも?だれでも」などは
「不定語」として別に考えました。(→「16.疑問語?不定語」)条件の「~
ても」で述語が「Nだ」の場合、「Nでも」の形になります。
教師が休みでも、学生は自分でよく勉強します。