一 (名)
(1)人体の肩から先の部分。手首・てのひら・指先などをさすこともある。また、動物の前足をいうこともある。
「―を上げる」「―が触れる」「おたまじゃくしに―が生える」
(2)形状や機能が、ヒトの(1)に似ているもの。
(ア)器物の取っ手。
「急須の―」
(イ)植物の蔓などをからませるための竹など。
(ウ)本体から突き出たもの。几帳(きちよう)の横木・幕を棹に付けるための緒など。
「鍵の―」
(3)(1)を働かせて様々な事をすること。
(ア)事を行なったり、物を作り出したりすること。また、その時の手の使い方。
「巨匠の―になる」「司直の―にゆだねる」「追及の―がゆるい」
(イ)働く人・力。
「―が足りない」「―を貸す」
(ウ)事を処理する能力。
「―に余る」
(エ)手間。手数。
「―がこんだ細工」「―ばかり掛かる」
(オ)人との結びつき・つながり。
「―を切る」
(4)事を行うための方法・技術など。
(ア)方法。手段。また、策略。
「その―には乗らない」
(イ)技量。腕前。
「―が上がる」
(5)技芸などの一定の型。
(ア)囲碁・将棋・相撲などで、攻め方・受け方。
「四十八―」
(イ)舞や踊りの手振り。
「さす―引く―」
(6)日本音楽で、(節(ふし)に対して)楽器の演奏。また、その旋律や音型。定型化されて慣用される。
「古い三味線曲に箏の―を付ける」「大薩摩の―」
(7)字を書くこと。また、筆跡・書風。
「一つには御―を習ひ給へ/枕草子 23」
(8)(手(1)に握ることから)
(ア)所有。保持。
「―にする」
(イ)支配下にあって思い通りに使える人や軍勢。
「―の者」
(ウ)トランプや花札で、持っている札。手札。
(9)方向。方面。
「山の―」「行く―」
(10)いくつかに分けたうちのある種類。また、ある手法・技法によるもの。
「この―の品」「高麗―」
(11)一方面の部隊。
「此の―の大将軍は何ものぞ/平治(中)」
(12)ものが現れ出ること。また、その勢い。
「火の―」「水の―」
(13)代金。代償。
「酒―」
(14)受けた傷。
「―を負う」
(15)種々の語と複合して名詞をつくり、手と関係する様々の意味を加える。
(ア)機械に頼らずに人の力によること、また他人の力を借りずに自分の力によることを表す。
「―料理」「―づくり」
(イ)小型で手の内に入る、または手で持って使えることを表す。
「―帳」「―斧(おの)」
(ウ)手(2)が付いていることを表す。
「―鏡」
(エ)身近であることを表す。
「―道具」
(オ)そのことをする人。また、特にそのことに秀でた人を表す。
「語り―」「小太刀(こだち)の使い―」
(16)形容詞・形容動詞の上に付いて、接頭語的に用いられ、物事の処理の仕方にかかわることを表す。また、転じて、下の語の意味を強めるのにも用いられる。
「―厚い」「―ごわい」「―ぬるい」「―広い」「―短に話す」