まずは「鬼」
――が住むか蛇(じや)が住むか
(建物の中や人の心の中などに)どんな恐ろしいものや恐ろしい考えがひそんでいるかわからない。
――が出るか=蛇(じや)が出るか(=仏(ほとけ)が出るか)
〔昔、傀儡(かいらい)師が胸にかけた機関(からくり)箱から人形を取り出す前に言った言葉という〕前途の呙?斡铚yしがたいことのたとえ。
――が笑.う
現実性のないことをからかっていう語.
「来年のことを言うと―.う」
――とも組.む
(1)勇猛なさまのたとえ。
(2)勇猛ではあるが、物の情を解しない人のたとえ。
――に金棒(かなぼう)
〔ただでさえ強い鬼に金棒を持たせる意から〕強いものがさらに強さを加えること。
――に衣(ころも)
(1)表面はおとなしく見えるが、内心に恐ろしいものを秘めていることのたとえ。狼(おおかみ)に衣。
「形は出家になれども、中々内心は皆―なり/浮世草子.織留 3」
(2)〔鬼は元来裸なので〕不必要なこと、また不似合いなことのたとえ。
――の居ぬ間に洗濯(せんたく)
気兼ねする人やこわい人のいない間に、したいことをしたり、息ぬきしたりすること。鬼の留守に洗濯。
――の霍乱(かくらん)
〔「霍乱」は暑気あたりの意〕いつも非常に健康な人が、珍しく病気にかかることのたとえ。
――の首を取ったよう
(大したことでもないのに)大変な功名.手柄を立てたように思って喜ぶさまのたとえ。
――の空念仏(そらねんぶつ)
無慈悲.邪悪な人間が、表面上は慈悲深くよそおうこと。また、がらにもなく殊勝にふるまうこと。鬼の念仏。
――の女房に鬼神(きじん)がなる
鬼のような冷酷.残忍な夫には、それと釣り合う同じような女が女房になる。似たもの夫婦.鬼の女房に鬼神の亭主。
――の念仏(ねんぶつ)
「鬼の空念仏(そらねんぶつ)」に同じ。
――の目にも涙
冷酷無情な人間でも、時には情に感じて慈悲の心を起こすことのたとえ。
――は外(そと)福は内(うち)
→福は内鬼は外(「福」の句項目)
――も十八番茶(ばんちや)も出花(でばな)
〔醜いとされる鬼も年頃になれば美しく見え、番茶でもいれたばかりのときにはよい香りがする意から〕女の子はだれでも年頃になれば、それ相応にきれいに見え、魅力もそなわるの意。古くは男女いずれにもいった。
――を欺(あざむ).く
〔「あざむく」はしのぐ、の意〕ひどく力が強い、あるいは容貌(ようぼう)が恐ろしいので、鬼かと思うほどである。
「―.く国性爺/浄瑠璃.国性爺合戦」
――を酢(す)にして食.う
恐ろしいものを何とも思わない。鬼を酢につけて食う。
「鬼を酢にさして食はんずる景気なり/盛衰記 37」