<学習のポイント>
1、 形容詞の種類
(1) 形から見た分類
日本語の形容詞は形から言うと、名詞を修飾する形(連体形)が「ーい」になるものと、「~な」になるものとに分かれます。前者は「美しい/やさしい/高い/赤い…」などで、日本語教育では<イ形容詞>)と呼ばれます。後者は「元気な/親切な/綺麗な/有名な/ハンサムな…」など漢語や外来語から取り入れられたもので、形容動詞(日本語教育では<ナ形容詞>)と呼ばれています。
<イ形容詞> <ナ形容詞>
やさしい + 人<名詞> 有名な + 人<名詞>
* 意味から見た分類
形容詞は「赤い/浅い/厚い/高い/詳しい/遠い/激しい/早い/広い/細い/丸い/短い/若い…」のように形状や状態を表す形状形容詞と、「うれしい/羨ましい/苦しい/うれしい/悲しい/懐かしい/恥ずかしい/~ほしい/~たい…」のように人間の感情や感覚を表す感情形容詞に分かれます。なお、「夜の公園は寂しい(状態)」「手紙が来ないので、寂しい(感情)」のように、両方の使い方がある物もありますが、文脈から理解する必要があるでしょう。
(2) 形容詞の活用
否定形の時、「~ないです→~ありません」「~なかったです→~ありませんでした」という形もありますが、ここでは普通形との関係で覚えやすいように、「~ないです」「~なかったです」の形を取り上げました。
★ イ形容詞の活用
寒‐いです 寒‐い 良[よ/い]‐いです 良[よ/い]‐い
寒‐くないです 寒‐くない 良[よ]‐くないです 良[よ]‐くない
寒‐かったです 寒‐かった 良[よ]‐かったです 良[よ]‐かった
寒‐くなかったです 寒‐くなかった 良[よ]‐くなかったです 良[よ]‐くなかった
★ 名詞・ナ形容詞の活用
雨・元気‐です 雨・元気‐だ
雨・元気‐ではないです 雨・元気‐ではない
雨・元気‐でした 雨・元気‐だった
雨・元気‐ではなかったです 雨・元気‐ではなかった
2、 形容詞文の基本型
(1) 基本型
・ 修飾用法と述語用法
形容詞には、名詞を修飾する用法と述語用法があります。
<修飾用法>
東京は 大きい 都市です。
にぎやかな
人口が 多い
<述語用法>
→ 東京は 大きい(普通形)/大きいです(丁寧形)。
→ 東京は にぎやかだ(普通形)/にぎやかです(丁寧形)。
→ 東京は 人口が 多い(普通形)/多いです(丁寧形)。
・ 「~は~が+形容詞」文
主題には「は」、その主題の部分や要素を取り上げるときは「が」がつくのが普通です。例2の「好き・嫌い・得意・苦手…」の「が」は対象を表していますが、文法的な違いを考えるよりも、形容詞文は「~は~が+形容詞」と覚えておいた方が実用的です。
<例1>
東京は 物価が 高いです。
人口が 多いです。 交通が 便利です。
<例2>
彼は 演歌が 好きです。
嫌いです。
得意です。
苦手です。
上手です。
下手です。
(2) 「て」形による文の連結
★ 「て」形の作り方
<イ形容詞> <ナ形容詞> <名詞>
やさし‐いです 有名‐です 日曜日‐です
やさし‐い<普通形> 有名‐だ<普通形> 日曜日‐だ<普通形>
やさし‐くて 有名‐で 日曜日‐で
★ 「て」形による文の連結
孫さんは やさしいです。 そして きれいです。→ 孫さんは やさしくて、 きれいです。
李さんは 親切です。 そして 頭が いいです。→ 李さんは 親切で、頭がいいです。
今日は 祭日です。 そして 学校が 休みです。→ 今日は 祭日で、 学校が 休みです。
(3) 形容詞の副詞用法
形容詞は、イ形容詞の「-い→-く」、ナ形容詞の「-な→-に」変えた形が副詞になります。
<イ形容詞> 速い → 速く 走る 遅い → 遅く 来た
<ナ形容詞> きれいな → きれいに 掃除する 上手な → 上手に 話す
(4) 形容詞の名詞用法
★ ーさ
ほとんどの形容詞は、その語幹に接尾語「-さ」(イ形容詞の場合は「-い→-さ」、ナ形容詞の場合は「-な→-さ」)がついた形が名詞になります。
<イ形容詞> 長い → 長さを 測る 重い → 重さが 10キロある
<ナ形容詞> 大切な → 基本の 大切さ 重要な → 問題の 重要さ
★ ーめ
また、形状形容詞(イ形容詞)の中には、語幹に接尾語「-め」がついた形で、「多め・少なめ・大きめ・小さめ・長め・短め・太め・細め・高め・低め…」のように、「少し~の程度・状態」を表す用法があって、「味は薄めがいいです」や「お酒は熱めの方がいい」のように名詞になったり、「味は薄めにしてください」「お酒は熱めにしてください」のような副詞になる用法があります。
★ ーみ
それ以外に、一部の形容詞の語幹に接尾語「ーみ[味]」がついて、「川の深み(=深いところ)にはまって、溺れた」「痛み(=痛い感覚)が増す」「赤み(=要素・傾向)を帯びていた」のように、「~ような感覚/気持ち/状態/要素/傾向/度合い/ところ/点」のように、そのものが持つ特徴を具体的に取り出して名詞にする用法があります。しかし、「-み」がつく形容詞は限られていますから、語彙として個別に覚えた方がいいでしょう。
<イ形容詞>
赤み・黒み・明るみ・暖かみ・厚み・甘み・痛み・うまみ・おもしろみ・辛み・悲しみ・苦しみ・渋み・楽しみ・強み・苦しみ・憎しみ・深み・丸み・柔らかみ・弱み・ありがたみ
<ナ形容詞>
憐れみ・真剣み・堅実み
<基本問題>
例題1 例のように、表を完成させてください。
例) 大きいです 大きくないです 大きかったです 大きくなかったです
例) 有名です 有名ではないです 有名でした 有名ではなかったです
1) 多いです
2) やさしいです
3) 楽しくないです
4) 高かったです
5) 寒くなかったです
6) 難しかったです
7) 安くないです
8) いいです
9) にぎやかです
10) 親切ではないです
11) 静かでした
12) 上手ではなかったです
13) 便利でした
14) 新鮮ではないです
15) きれいです
例題2 例のように、表を完成させてください。
例) 美しい 美しくない 美しかった 美しくなかった
1) 高かった
2) やさしい
3) 重くない
4) うれしくなかった
6) きれいではない
7) 静かだった
8) ハンサムではない
9) 雨です
10) 明日ではない
(2) 1)~10)について、例)のように連体・連用の形を書いてください
例) 大きいです → 大きい +N / 大きくて
1) +N / 2) +N /
3) +N / 4) +N /
5) +N / 6) +N /
7) +N / 8) +N /
9) +N / 10) +N /
例題3
A :昨日、友だち(ア) 新宿へ 映画を 見(イ) 行きました。
B :その 映画は おもしろかったですか。
A :いいえ、あまり( A )。
(1)(ア)(イ)に助詞(かな一字)を入れてください。
(2)(A)の中に入る適当なものはどれですか。
a. おもしろいです
b. おもしろくないです
c. おもしろかったです
d. おもしろいでした
e. おもしろくなかったです
解答
1、ア=と イ=に
2、A=e
「あまり」の使い方
「あまり」には肯定形と呼応する形と、否定形(~ない)と呼応する形と二つあります。口語では「あんまり」となることがあります。
「あまり(に)~だ」と肯定形と呼応するときは、「過度に<程度>/過多に<数量>」の意味を表します。
あまり多すぎて、全部食べられない。
あまり飲むと、体によくないよ。
「あまり~ない」と否定形と呼応するときは、程度や数量が話者の予想や期待以下であるという気持ちを表します。この場合、「それほど~ない」とほぼ同義表現です。
あまり行きたくないんだ。
時間があまりない。
例題4
A :いい 靴ですね。
B :ええ、軽いです(ア)、それに ( A ) から、この 靴に しました。
A :靴(イ)( B )の(ウ) 一番ですね。
(1)(ア)~(イ)に助詞(かな一字)を入れてください。
(2)(A)(B)の中に入る適当なものはどれですか。
a. 丈夫だ
b. 丈夫です
c. 丈夫の
d. 丈夫な
e. 丈夫で
解答
1、ア=し イ=は ウ=が
2、A=b B=d
「~し、(それに)~」
「~し」は動詞や形容詞の「です・ます形」にも、普通形にも接続します。
意味の上では事柄を列挙するときにも、理由を列挙するときにも使える便利な接続助詞です。また、接続詞「それに」は「~し、それに~」といっしょに使われることも多いので、セットで覚えましょう。
事柄の列挙
緑も多いですし、それに水もきれい です。
緑も多いし、それに水もきれいだ。
理由の列挙
家賃が高いですし、それに食べ物も 高いですから、日本での生活は楽で はありません。
家賃が高いし、それに食べ物も高い
から、日本での生活は楽ではない。
例題5
A :これ、高いねえ。もっと ( A )ならない?
店員:お客さん、これ 以上 ( B )する(甲:の/こと)は 無理ですよ。
A :じゃ、もっと ( C )(乙:の/こと)は ない?
店員:それでしたら、こちらに ございます。
(1)甲 乙 は正しい方を選んでください。
(2)(A)~(C)の中に入る適当なものはどれですか。
a. 安い
b. 安く
c. 安くて
d. 安さ
e. 安め
解答
1、甲=の 乙=の
2、A=b B=b C=a
「これで いいですか」
「これで」の「で」は判断の基準の「で」ですが、許可や承認を求める時に使う「これでいいですか」は、そのまま覚えてしまいましょう。
A:ここにサインをお願いします。
・・・(サインして)・・・
B:これでいいですか。
A:はい、けっこうです。