①「そうですか」
男は骨ばった长い指で髪の毛をかきあげた。
「ぼくはこんな晩の方がすきなんですよ。なんとなく不気味で面白いじゃありませんか」
わたしは変わった男だなと思った。私が黙っていると?彼が问い挂けてきた。
「②この船に幽霊が出ると言う噂があるんですが、しっていますか?」
「幽霊?」
と私は闻き返した。
「ええ。やはりぼくたちみたいな客の一人が?自杀したことがあるんだそうです。こんあふうに重苦しくて?风のない晩だったといいますよ。その男はしばらく海を眺めていて、ふいに飞び込んだんです。ちょうどここから、今、ぼくらがこうしているところからね」
男は私の顔をのぞきこむようにして?にやりと笑った。
「あがった死体は、右の腕がなかったそうです。スクリュウに切り取られたのかもしれませんね」
二人は暗い海にほの白く泡だっているスクリュウのあとをしばらくみつめた。
「それで?その幽霊が出るんですね」
私の声は少し震えているような気がした。
「ええ、自分の失った右腕をさがしているのだという噂です。こういうふうにむしむしして、海が妙に静まり返った晩、③男が一人でその海を眺めてる。そして?しばらくするとふっと消えてしまうのです。」
男は自分自身をかき消すようなしぐさをした?
「なぜ、その男が自杀したのか知っていますか。」
と私は讯いた。
「(④)、何の原因もないのです。金に困っているわけでもなく、失恋したわけでもなかった」
眉をひそめ?男は远いところを见る眼つきで海をみつめた。
「多分」といって男は口ごもった。
「多分、この海をみているうちに、なにもかもいやになったのでしょうね。そして、ひきずりこまれるように、飞び込んだのでしょう。ぼくには、その気持ちがわかるな。こうしていると、何もかも忘れて、この海の底でねむりたくなる。あなたは、そうおもいませんか?」
私も?海を见つめた。海は暗く?静かにわたしを呼びかけているように思えた。
(注1)骸骨のように痩せ细かった:非常に痩せた
(注2)私を呼びかけている:通常は「私に呼びかけている」
ここまで読んで?次の问1から问4に答えなさい
问1①「そうですか」の意味に最もちかいものは?どれか?
1わたしもそう思います
2わたしはそう思いません
3わたしは夜が嫌いです
4わたしも夜が嫌いじゃありません
问2②「この船に幽霊が出ると言う噂」とあるが、この噂によると幽霊はどんな时に出るか。
1蒸し暑くて海の静かな晩
2もの哀しい気分にさせる晩
3海がほの白く泡立っている晩
4自杀したいと思っている客がいる晩